激しい腰痛や足のシビレ、その原因で代表的な疾患が「腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症」です。
ヘルニアや狭くなった脊柱管によって圧迫された神経が痛みやシビレを発生させます。
しかし、このような神経圧迫セオリーは様々な研究によって否定されてきています。
椎間板とは、背骨と背骨の間に挟まれた衝撃をやわらげるクッションの役割をはたす組織で、中にはゼリー状の物質が入っています。このゼリー状の物質が椎間板から後方に飛び出して神経を圧迫するために、痛みやシビレが生じるというのが一般的な考えで、私もそう教わってきました。
ところが、多くの研究報告によってこの説に矛盾が生じています。
国際腰痛学会の論文によると、腰に痛みのない健康な人の腰をMRIで調べたところ、その76%に椎間板ヘルニアが見つかりました。そして86%の人に椎間板の変性が見つかりました。
つまり、腰に痛みのない人の8割近くに椎間板ヘルニアが存在するということです。
続いて、脊柱管狭窄症について考えてみます。
脊柱管狭窄症とは、神経の束を通す管である脊柱管が様々な原因で狭くなり中を通る神経が圧迫され、腰や足に神経症状が生じるという疾患です。5分、10分歩くだけで痛みに見舞われ、それ以上歩けなくなってしまう間欠性跛行が特徴です。
背骨は加齢とともに変形が進みます。そのため高齢者の70%に脊柱管狭窄症が見つかったとの報告があります。
腰椎に異常が見つかり、激しい痛みがいつまでたっても改善しない患者さんは、最終的に手術を選択することがあります。手術をして良くなる人もいますが、痛みが改善されず悪化してしまう人もいます。
2年間にわたるコホート(追跡)研究によると、坐骨神経痛がある椎間板ヘルニアの手術は、疼痛、復職率、活動障害において保存療法より有益とは言えず、坐骨神経痛は手術の有無に関わらず時間がたてば改善する
(Atlas Sj.et al,Spine, 2010)
椎間板から飛び出たヘルニアは時間と共に吸収されるため、手術をしてもしなくても回復するということです。
ただし、腰のヘルニアが神経を圧迫して麻痺が生じる「馬尾症候群」といった重大疾患(レッドフラッグ)は除かれます。
このような研究もあります。
●メイン州の3つの地域で椎間板ヘルニアか脊柱管狭窄症で手術を受けた665名を2〜4年間追跡した前向き研究によると、手術実施率が高い地域は低い地域より治療成績がおとる(Keller RB.et al,J Bone Joint Surg Am,1999)
●腰痛疾患は基本的に手術の対象ではなく、適切な管理で99%の患者が手術を避けられることから、脊椎外科は手術を一時的に凍結すべき(Rosomoff HL & Rosomoff Rs,Med Clin North Am,1999)
ヨーロッパガイドラインによれば、2年以上におよぶ診療ガイドラインが勧告しているすべての保存療法に失敗するか、勧告に従った治療プログラムを行えない場合を除き、手術は非特異的慢性腰痛の治療として認められない。仮に手術を行うにしても、患者の選択は慎重でなければならない。
全腰痛患者の85%以上は原因を特定できない非特異的腰痛ですが、画像検査で確認できる腰椎の変性も腰痛とは無関係とされています。
様々な研究で、神経圧迫と痛みの関連性に否定的な報告がありますが、生理学的にはどうなのでしょう?
加茂整形外科医院院長である加茂 淳先生の著書の中でこのように書かれています。
- 痛みは、知覚神経の先端についている痛みセンサーだけがキャッチする
- 痛みセンサーが電気信号を脳に伝えてはじめて痛みが感知されるのであり、神経の途中で痛みが発生したり、感知されることはない。
つまり、神経が痛みを感知できるのは、先端のセンサー部分だけ。神経の途中で痛みが発生することは起こりえない。ヘルニアで神経根が圧迫されても痛みやシビレは生じないことになります。
長い間、骨の変形やヘルニアによる圧迫が腰痛の原因と説明されてきました。しかし、科学の進歩による様々な研究で腰痛に関する新たな事実が分かってきました。
日本でも腰痛に苦しむ人は年々増加しています。正しい情報を見きわめて認知の歪みを取り去ることが長引く腰痛を解消する一つの方法だと思います。
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