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高齢者の交通事故は増えている?データから見る真実

 近頃テレビやインターネットのニュースで盛んに高齢者の交通事故を取りあげ、免許の自主返納を推進しています。

 当院にも車で来院される高齢の患者さんは多く、こういった報道を見て心配されています。


 ですが、もっとも交通事故を起こしやすい年齢は若年層で、そのため保険料も高く設定されているというイメージがありますが、今は違ってきているのでしょか?

 その辺のモヤモヤを解消してくれる記事がありましたので、参考にさせていただきました。



高齢ドライバーが起こす交通事故は20代より少ない

 
 いま日本では急速に高齢化が進んでいて、高齢者の事故件数が増えるのはある意味当然といえます。そのため、この高齢化の影響を除いた見方で事故の増減がどうなのかを確かめることがポイントとなります。

 
 上のグラフは年代別の全件数ではなく、その年代の免許者10万人当たりの事故件数がどう推移しているかを示しています。対象は第1当事者で、その事故において過失の重い人になります。

 このグラフから見ると、事故件数は全体的にゆるやかに減少しているのが分かります。

  データから見ると目立って多い年代は「16〜19歳」、その次は「20〜29歳」となり高齢者の事故件数が特別多いわけではないようです。


どのデータを見るか

 見方が偏らないように高齢ドライバーの事故が増えていると思わせる記事も見てみました。


 

 ここで使用されているグラフは「人口10万人あたりの交通事故による死者数(2015)」です。このデータから「交通事故による死亡者は高齢者に多い」ことが分かります。

 この記事によると高齢者の交通事故に多いのが歩行中で約5割。自動車乗車中と自転車使用中の割合は書いてありません。

 
 このグラフから分かるのは、高齢者が事故の被害者となることが多いことと、事故によって死亡する高齢者が多いということです。事故件数の推移は分かりませんし、高齢ドライバーの事故件数に関するデータでもありません。


増えたのは報道

 データから分かる事実は、高齢ドライバーが加害者となる交通事故はゆるやかに減っていて若者よりも少ないこと、それから、高齢者は交通事故によって命を落とすことが多いことです。

 つまり、高齢ドライバーの事故に関する報道が増えていて、その報道を見た人が実際には減っている高齢者の事故が増えているように錯覚しているということになります。

 メディアでは、物事の一部分だけを切りとって数分にまとめられるため、何が語られていないのかを知ることが大切です。




 例えば、地球の温暖化ありきで報道をする際には北極の氷が減少していることだけを伝え、南極の氷が増えていることは伝えません。伝えられていない事実や研究者による見解の違いもあるので、その両方を伝えないと情報を受けとる側は偏った解釈をしてしまいます。


 医療情報についてもこの傾向は多く、テレビやインターネットから正確な情報を得ることは困難であるため、自身が持っているバイアス(先入観)に気づき、正しい情報を見極めることが大切といえます。

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