小学生6年生男子。
少年野球をやっているそうです。
1か月前に病院で検査を受け、
「腰椎分離症」と診断されました。
その時、病院の先生からは腹筋や背筋をつけるしかないと言われたそうです。
いろいろな治療院にも行ってはみましたが改善しないため、当院に来院されました。
腰椎分離症は10歳代から発症するといわれる、背骨の腰部分の一部が疲労骨折する病気です。
スポーツなどで腰に繰り返しのストレスが加わり、腰椎の後方に亀裂が入って起こります。
腰痛や下肢痛、シビレなどが主な症状で、上体を後ろに反らした時に、その症状は強くなります。
上記の説明は、医学書や教科書に書かれてある腰椎分離症の特徴です。
しかしながら、新たな研究に目を向けてみると、
画像検査で見つかる腰の異常と痛みとはあまり関係がないことが分かっています。
検査をすれば、腰痛があってもなくても同じような割合で、
分離症が見つかることが立証されています。
今回のケースを見てみると、痛みがある部位は〝左股関節の前面〝と〝左膝の上下〝です。
ちょうど「大腿直筋」という太ももの筋肉の走行と一致しています。
画像検査を無しに考えれば、
太もも前面の筋肉が硬くなって痛みが出ていると考えた方が自然です。
また、分離症があると「後屈でいたみが増す」という特徴から考えてみても、少し違っているように思います。
腰の動きを見たところ、前屈と左側屈時に左股関節前面への痛みと可動域制限があり、後屈は問題なくできています。
太もも前側の筋肉の柔軟性が低下し、
股関節が曲がるとき、筋肉が詰まった感じになっているのではないかと判断しました。
2回目の来院時、本人に症状を聞いてみると…
「変わりない」と、少し残念な返答。
ですが、何か変化があるだろうと問診と検査をしてみたところ、
-
前回より前屈の可動域が上がった
-
足の痛みがなくなった
-
膝の痛みがなくなった
-
野球は痛みなくできている
聞いてみたところ、良くなったところだらけです。
一度の施術でここまで改善したところから、初期の痛みの原因はともかくとして、
今ある痛みは分離症からくるものではなく、
筋肉の柔軟性や血液の流れが関係しているのだと思われます。
初診の検査では、立位の前屈はほとんどできていませんでした。
今は手が膝に届くくらいに改善しています。
しかし、本人にしてみれば、
「昔は手が床にベッタリついていた」
とのこと。
ピークの頃の自分と比較して、できないところにフォーカスしてしまっています。
痛みが長引く人の傾向として、今痛いところや悪いところに注目してしてしまい、
良くなったところに気づかないことがあります。
慢性痛を抱える人には、〝ゼロか100〝という極端な考え方が特徴としてあります。
「以前のようにできない」という考え方から、改善しているところもあるのにもかかわらず、
「これでは何も変わらない」と思ってしまうこともあります。
このような思考では心の不安は解消されず、脳の働きにも異常をきたしてしまいます。
-
病院で腰椎分離症と診断された
-
痛みで野球の練習ができない
-
腹筋と背筋をつけるしかないと言われた
-
前屈と左側屈で痛みが増す
-
痛いのは左股関節前面と左膝
上記に挙げた5つの症状は、すべて改善に向かっています。
ただ、本人にとってはまだ満足のいく結果ではないようです。
痛みの感じ方においては、痛い場所の他にも「脳の働き」が関わっていることが分かっています。
「腰椎分離症があるから痛みが良くならない」
というような思い込みが強すぎると不安が増し、本当はできる動作を避けがちになり、身体機能とともに、脳機能が低下。
症状が長期化してしまうことがあります。
正しい情報と、それに従った行動をとることが大切です。